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【008】社会を原因に「麻布をあきらめる」のはまだ早い!

麻布中学の社会を教え続けて19年になりました。もちろん、世の中には2倍以上のキャリアを持たれる先生方もいらっしゃるのではないかと思います。今後も問題・指導法ともに研究を重ねていく決意は変わりません。

麻布中学の社会ほど誤解されている教科も無いと思います。曰く、

1.「大学受験の社会科(日本史か?)講師でも解けない」
2.「あれは勉強ではなく『教養』を聞いているのだ、対策の仕様がない
3.「もともと麻布の社会ができるセンスを持っている子は決まっている」
4.小学生の知識の範囲をはるかにこえている」
5.一般の小学生の生活で触れる範囲をこえている」
6.「頭の切れと賢さを求めているため、今までの勉強は役に立たない

こんなところでしょうか。

1.まず「大学受験の講師でも」というのは、意味がよくわかりません。英語の講師が「この高校の英語は、大学受験の英語講師でも解けない」と言うならなんとなくわかりますが、大学受験の日本史と中学受験の社会科はほとんど別教科です。さらに、一部国公立大学を除けば、大学受験の日本史は基本的に知識を聞く問題が多く、頭の使い方が違うのです。

2.「教養を聞いているので、対策の仕様がない」というのは、授業ができないということの言い訳とも聞こえます。たしかに「頭を使わせる」問題は多いですが、読んで、見て、問いの誘導の意味をよく考えれば解ける問題がたくさんあります。

3.「センスを持っている子(麻布の社会に向いている子)」は確かにいます。逆に「センスが無い子(麻布の社会に向いていない子)」もいます。しかし、20年分の出題を並べて、共通点を見出すことで、どのようなことに着目すべきかを伝えていくことは可能です。

4.「知識の範囲を超えている」は論外です。雑学・トリビアを聞く学校ではありません。一見、社会科ができそうに見えて、麻布の社会になるとコテンパンにやられるタイプの生徒の口癖は「ねえ先生、これ知ってる? これ知ってる?」です。一昔前なら「知っている」ことにそれなりの価値があったかもしれませんが、インターネット全盛のこの時代「知っている」ことの価値は大幅に下落しているといってよいでしょう。むしろ「考えられる」ことの価値がぐんぐん上昇しています。

5.「一般の小学生」がどういう小学生だかわかりませんが、少なくとも誰でもわかるようなことばかり聞くわけではありません。そんなものは入学試験として成立しないでしょう。「未成年は飲酒禁止」「赤信号では止まりなさい」ということを聞けとでも言いたいのでしょうか。

6.「頭の切れと賢さ」「今までの勉強とは性質が違う」は、逆の意味で利用されることが多いです。漢字の練習は嫌い、手で書くことはしない、覚えるべき最低限のことも覚えない、授業は聞かない、字はなげやり、だけどなぜか、本人、ご家族ともに「俺(うちの子は)は『周りの子よりも賢く、頭がいい』んだ(単純な暗記などは退屈過ぎてやる気がでないのだ)」と思いこんでいるタイプの生徒が「一般的な入試問題を出題する学校は向いていないが、麻布だけは通用する」と思いこんで受験するパターンが、毎年見られます。そんな甘いものではないことははっきり言っておきます。自由な学校とは言われますが、そういう「自由をはき違えた」生徒を見抜けないほど甘い学校ではありません。

一生懸命麻布を目指して勉強してきた生徒さんの中で、社会科が原因で「麻布をあきらめようかな」と思っている生徒さんがいたら、府川は「あきらめるのはまだ早いよ!」と伝えたいです。

では、麻布中学の社会の特徴とはどのようなものでしょうか? 無料ブログで、自分の手の内を全てさらけ出すのは無理なので、いくつか挙げるにとどめておきます。

まずは「社会の変化」を常に考えるということです。「時代によって社会がどう変化したか」「何かが発明されることで、どのように社会が変化したか(どのような問題が解決され、どのような問題が新たに生まれたか)」を考えることが大切です。たとえば「自動車」が発明され、普及したことでどのような変化があったか、生活は、町の形は、産業は、と考えていくときりがないですね。「少子高齢化」「家族」なども巨大なテーマです。

それから「メディアの特性」についてもよく考えておくべきです。ラジオとテレビ、テレビと新聞、インターネットと人間、などについてです。特にインターネットは「人間の質」「人間の在り方の質」を変えているように見えます。「国語が物語しかでないから、論説文はいいや」など、言語道断です。インターネットと人間についての文章など「実感」としてわかるレベルまで、論説文は丁寧に読み込みましょう。「メディアと国家と国民」という発想も大切。

「物の性質」というのも大きなテーマです。「手形と銅銭」「商品作物とは」「お金と物は何が違う」「個人旅行とパッケージ旅行」…まあ、きりが無いのですが、こういうところへの視点を持っておくことは大切ですね。

ちょっときりが無いのでこの辺で終わりにしますが、要は「過去問をやる際に、必ず問題を一般化して教えること、単発の結果論・事実を伝えて解説を終わりにしないこと」が大切です。

その生徒がすでに演習済みの問題を把握し、その中から、同じ構造の問題を持ってきて並べて「前にやったこの問題と同じ発想で出題されているよね」という作業が不可欠だと思います。

さらに力をつけるには「A・B・Cの中からどれか1つ選び、答えなさい」という問題については、全部演習してみる、さらにその場で新しい問題を出してやってもらう、オリジナル問題を演習してもらうなど、本人の頭を最大限使わせる指導があると良いと思います。

逆に、どうしても伸びない生徒のタイプも挙げておかないと不公平です。これは「まるで実社会の実感がない」生徒です。「社会科」という作られた社会(世界)のことを答えようとしている、自分とは別次元の社会のことを「作り出そう」としている生徒は、社会科は最低限の問題を得点し「他の3教科で勝負をかける」という作戦になると思います。自宅ー学校ー塾しか世界が無い、こういうタイプはどうしても伸びない、何を説明しても「実感」として落とし込まれないからです。

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小笠原諸島・母島には、旧日本軍の戦跡がたくさん残っていました。鉄扉が残っているのは貴重ですね。なぜ貴重で、なぜ残っているのかは考えてみてください。 

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by S-Fukawa | 2019-06-25 17:03 | 社会

首都圏周辺で、中学受験「国語・社会」の家庭教師を請け負っています。家庭教師ならではの強みを生かし「一方的に教え込む」のではなく、生徒さんに考えさせる質問を通じて、じっくりと「本人の力で解けるようになる」ことを目指しています。特に国語・社会ともに「記述問題でお悩みの生徒さん」は、ぜひご相談ください。詳細はプロフィールをご覧ください。


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