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【021】読書と国語について

「うちの子は読書をしないので」
「小さいころから読書嫌いでした」
「本を読むのは大好きだったんですが」

保護者様と、面談や体験授業の日程についてメールでやりとりをしている時、あたりまえですが「現在の成績、課題、お悩み」の話になります。その際、保護者様がお子様についていろいろ書いてくださるわけですが、ほぼ必ず「読書」について言及されます。

現在の受験生の中心は、2010年生まれ前後でしょうから、35歳の時のお子様と仮定して、保護者様は1975年生まれ前後。いわゆる「第二次ベビーブーム世代」ということになります。私とほぼ同じ年くらいです。私の大学時代の友人たちも、ついこの前の2月に「長男の受験を終えた」ということを言っていましたね。この世代はまだ「国語=読書」の構図が、頭の中にかなり刷り込まれている世代のように感じます。

今回は、読書について、ヒントとなりそうなことを書いてみます。

とにかく35年前の入試問題と、現在の入試問題は全くと言っていいほど違う」ということを認識する必要があります。

私自身は読書嫌いで、母親によく怒られていました。コミックばっかり読んでいる、歴史漫画ばかり読んでいる、当時大流行だったゲームブック(ご存知の方いらっしゃいますかね?)ばかりやっている、少しは名作の文学を読め、云々…。しかし、国語で苦労したことも無ければ、国語の成績はむしろ良い方でした。だから「読書しなくても国語はできます」と言いたくなるわけです。実際、読書好きでも国語に苦戦している子はたくさんいますし、その逆もいます。

ただ、当時の私を今振り返ってみると「長文を最後まで読み切る根気」はあまりなかったように思えますね。当時の入試問題は短かったです。B5で1ページくらい。B5で1ページにならないような文章も多かったです。これなら根気の無い府川でも、一気に読み切れるというものです。現在の入試問題は、B5で4ページ…5ページ…と続き、めくってもめくっても文章などということもあります。

では、読書すればよかったのかと言えばそうとも言い切れません。好きなジャンルや面白い本なら引き込まれるようにして読むでしょうが、入試問題で「自分の好みに合う文章」が出題される率などないに等しいからです。読書によって「文章を読むアレルギーが無くなる、根気・集中力が養われる」と言う意見も散見されますが、好きな本だけ選んで読んでいれば、集中するに決まっています。全く興味のない文章を読み切る根気が養成されるとは、ちょっと思いません。そもそもどのようにして「興味のない本」を手に取る機会ができるのでしょう?

また、入試問題自体も進化・難化しており、文章全体のテーマをまとめたり、心情の変化を記述させたり、紛らわしい選択肢を選ばせたりなど、技術が求められます。「勉強してきたか、してこなかったか」が反映されるようになってきています。おそらく、当時の府川が現在の問題をやったら、解けなかったのではないかと思います。

そう考えると、読書と入試国語は到底直結しないと思われます。読書よりむしろ「一定の長さを持った、起承転結、前半と後半の変化がある、オチのある文章」を選んでくれている教材をしっかり読み解き、問題演習をしていく方が良いと思います。逆に、市販の問題集や、塾のテキストなどを見て「あまりに文章が短いな」と感じたら、少し注意が必要です。

ただし、1つだけ読書の良い点をあげると、わかるまで時間無制限で何度も読み返すという経験ができるということかもしれません。読書していて、少し難しめの表現・語句や、複雑な人間関係がでてきたり、頭の中で「文字が絵にならない」という場面にあたることが時々あります。ここが言ってみれば「脳の鍛えどころ」なわけです。あくまで文字情報だけから読み取る、という練習になります。まあ、だからこそ、わからないことを気にせず、最後まで読み飛ばして「面白かった~」で終わる読書には、何の効果も無いということです。

塾の国語の授業の場合、文章を授業中に解くと、どうしても「制限時間」があるわけです。この「制限時間内」に解くというのは「文章と戦って読み切ろう」とする前に「なんとか解答を埋めよう」という意識が先に立ちます。当たり前のことです。だからこそ「文章を読む地力がある」生徒はどんどん「解き方」を身につけて得点力をあげていく一方、「文章自体にはじき返されている」生徒は相も変わらず、ということになるのではないかと思います。

そこで、読書の良い点を、家庭学習・復習に取り入れてみてはいかがでしょうか?

生徒さんの「復習」を見ていますと、間違った記号選択肢を書き直しているだけ、模範解答を写しているだけのようなものが非常に多いです。で、文章自体を音読してもらって、いろいろ聞いていくうちに、まるで読めていないことが発覚します。

復習の際、文章を何度も読み返してみてはいかがでしょう? 話が見えるまで読み返してみるのです。塾ではできない学習です。最初のうちは保護者様が一緒に読んでいただいても構わないと思います。音読は最初に1~2度はやった方が良いと思いますが、そのあとは強制的にやらせる必要が無いと思います。

ただし、人間は「うん? なんかわからないぞ? えっと、なんだ…『あの子たちの母親は…父の葬式にも顔を見せずに…? …母さんにいじめられたかも…?』ちょいまち人間関係が分からんな…」とひっかかったところをわかろうとする際には、思わず口に出てしまうものではないかと思います。場合によっては人間関係の系図を自分で書いて、整理してみたりということが始まるでしょう。家庭学習でしかできないと思います。もちろん、塾でもやるのですが、本人が疑問に思う前に種明かしをしてしまうので、結果だけ持ち帰ってしまうんですね。

日本人の「人間関係を表す言葉」というのは、難しいですね。「おばあちゃん - その息子=孫の父親 - 孫」と登場する際に、息子が「母さんが」と発話した場合「おばあちゃん」を指しているのか、孫に対して「お前たちのお母さん(息子の妻)」を指しているのか、ケースバイケースでして、いちいち読み取らないといけません。これがまた、核家族の中で暮らしている現代の子供たちにとっては意外にわかりにくい。

「叔父さん(伯父さん)」「叔母さん(伯母さん)」「甥・姪」あたりになるとかなり厳しくなってくる。主人公たちの母親が結婚している、旦那の弟さんが「叔父さん」になるわけですが、こうなると叔父さんにとって「義理の姉」ということになり、血のつながりは無い…、こういう人間関係を表す部分、しっかり「文章の復習」が必要なのではないでしょうか。

ましてや、最初から人間関係は説明されていないのですね。話を読み進めるごとに、だんだん明らかになっていく、種明かしされていく、という構造になっているものも多い。そうなると、最後まで読み終わって、あらためて最初から読むといろいろわかってくる、ということもあります。

このような複雑な人間関係を描いた小説を、自ら手にする機会は稀ですので、やはり読書よりも、教材を利用する方が良いという結論になります。読書による多読を意識する前に、現在扱っている教材の質の見直し、復習の質の見直しを意識される方が良いと思います。

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2007年に訪れた京都・祇園の街並み。落ち着いた街で、人が歩いていませんでした。
今では外国人観光客(インバウンド)でごったがえしています、隔世の感がありますね。
観光関係についてはいろいろアンテナをはっておきましょう。

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9月以降の過去問演習期間は、複数の家庭教師の日程調整ども大変になりますが「国語・社会」を隔週で教えるなど、柔軟な対応が可能です。お気軽にfukawa.a.f.p.t@gmail.com」までお問い合わせください。

by S-Fukawa | 2019-08-05 14:13 | 国語

首都圏周辺で、中学受験「国語・社会」の家庭教師を請け負っています。家庭教師ならではの強みを生かし「一方的に教え込む」のではなく、生徒さんに考えさせる質問を通じて、じっくりと「本人の力で解けるようになる」ことを目指しています。特に国語・社会ともに「記述問題でお悩みの生徒さん」は、ぜひご相談ください。詳細はプロフィールをご覧ください。


by フカッシー